2022年3月、京都・比叡山のふもとに誕生したホテル「moksa(モクサ)」。ブランドコンセプトでもある「再生」へとゲストを導く装置のひとつが、完全予約制のプライベートサウナ「蒸庵(ジョウアン)」だ。
プロデュースしたのは、このzau💦magで『汗は美容液』を連載している「しきじの娘」笹野美紀恵。〈炭蒸〉〈檜蒸〉〈美蒸〉という、コンセプトの異なる3つのサウナが完備されている。
〈炭蒸〉は、この地に伝わる小原女文化(女性が薪を頭に乗せ京の都で売ること)を象徴する「炭化した薪」をイメージした、黒を基調とした空間だ。
〈炭蒸〉左手前が風呂、奥が水風呂、右の小さな扉が、サウナへの入り口
「テーマは“無”。いまデジタルデトックスが話題ですし、いかに脳を解放して“無我の境地”にたどり着けるかという部分に着目しました。〈炭蒸〉には石庭があって、日没後はライトアップされるのですが、よく見ると石が宙に浮いているようなアングルになっているんです。サウナでととのったあとだと、幻想的というか、非常に不思議な感覚になれるのではないかなと」
サウナの出入り口は、茶室の躙口(にじりぐち)のように腰をかがめないと入れないが、これも笹野のこだわり。「サウナ=単なる四角い箱」というイメージを打ち消したかったという。
〈炭蒸〉たくさんの仕掛けが施された、オーダーメイドの水風呂
また、水風呂は3室とも、比叡山の地下水を汲み上げ、1組入るごとに水を入れ替えているが、〈炭蒸〉ではさらにバスタブに炭を沈めて水を濾過している。しかも頭のてっぺんに落ちる滝水は、水がスピンして落ちてくるようになっているとか。
「水にもデザインがあるので、脳に当たるときに回転していたら、もっと気持ちいいと思ったんです」
〈檜蒸〉は、比叡山に多く自生する檜をテーマにした。
イメージは「木漏れ日」で、サウナ室では枕を調整して寝転ぶことができる。アロマ水も用意されており、ストーブの上にぶらさがる檜のオブジェへとセルフロウリュも可能だ。
〈檜蒸〉のサウナ室内
絶妙だと感じたのが、バスタブにもたれる際のリクライニングの角度だ。笹野によれば、すべてのバスタブもこだわりの逸品。
「私は身長が167cmなのですが、一般的な男女の平均値(男性175cm、女性163cm)を足して2で割ったのがちょうど私の身長なんですね。それに合わせて、ぜんぶモックアップでゼロからつくりあげました」
〈檜蒸〉左が水風呂、右が風呂。敷石や手すりの位置も絶妙
3つ目の〈美蒸〉は、美に特化したミストサウナ。美顔器にも使用されている皮膚のコラーゲンを活性化させる特殊な光を用いている。
〈美蒸〉のサウナ室内
〈美蒸〉左が水風呂、右が風呂
「633nmの可視光線を照射する特殊なライトを使用していて、この可視光線が肌の真皮層まで届き、肌や髪の細胞を活性化させるんです。男性も、最初はこの空間設計や色調にギョッとするんだけど、入ったあとは『驚くほど温まった』といってリピートする方が多いですね」
全室ともにノンアルコールのシャンパンと季節のフルーツが用意されているのも嬉しいかぎり。75分間、ひとりで、または友人や恋人たちと、至福の時間をぜひ味わってほしい。
薪火料理レストラン〈MALA(マーラ)〉。大原の農家や京都近郊から旬の食材を仕入れている
カウンター喫茶〈帰去来(ききょらい)〉。体調や体質に合わせて薬草茶をつくってもらえる
text by Kaoru HORI
■moksa(モクサ)
住所:京都府京都市左京区上高野東山65
アクセス:
お車:京都駅より車で40分
電車:叡山電鉄「八瀬比叡山口駅」下車 徒歩5分
比叡山ケーブル「八瀬駅」下車 徒歩5分
バス:京都バス「八瀬駅前」下車 徒歩7分
料金:39,600円〜/1名(参考価格、ディナー・朝食・サービス料込み)
サウナ利用1室 炭蒸19,800円、美蒸16,500円、檜蒸13,200円(75分3名まで)
Web:https://moksa.jp