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第二話 ランナー 夕顔

谷村志穂

 冷たい水の中で、オレンジ色のタオルが生き物のように膨らむ。はじめは褪せたような色だったはずが、鮮やかな色になってその冷たさを伝えてくる。
 ここは水がいい、と杉山道生はすぐに思う。洗い場に腰掛けこれから始まるサウナ時間に期待を募らせながら、固く絞ったタオルで、まず顔を覆った
 今では、すぐに汗が吹き出す。薬草湯で体を温めた時点で、早くも額から汗が伝う。けれど本当に欲しい汗は、もっと極太で大粒の汗だ。
 ようし、行こうか、と薬草ミストサウナ室の扉を開いた瞬間に、熱すぎる蒸気が充満しているのに気づく。まじか? これ、熱すぎるだろう? 壁の温度計を見ると、百度を超えている。三段になった腰掛けの一番下に座ってみるが、汗どころか全身が鳥肌が立つほど熱く、道生は恐怖すら覚え、サウナ室の外に出た。
「あっつ、これ火傷レベルだわ」
 やはり、入ってはみたものの慌てて飛び出してきた、自分と似た歳の頃の男たちが二人。ですよねーと、思う反面、道生には、それなりのサウナ歴があるのだという自負があり、
「無理無理」
 なんて、軽く言っている彼らとは同じになりたくないという邪な気持ちが、こんな時どうしても溢れて出てきてしまう。出したいのは汗なはずなのだが、邪な気持ちの方が強く道生を混乱させ、もう一度未練がましく覗き窓を見た。
 上には上がいるものだった。一番上の段で、じっと座っている猛者らが二人もいる。一人はいかにも逞しい体つきだ。分厚い胸板に、日焼けした顔は、汗なのか蒸気なのかでずぶ濡れだ。だが、もう一人はいかにも青白い肌の若者だった。最近、増えたこんな若者たち。
 覗いていると、いかにも清々しく出てきた。すーっと小さくため息をつき、華奢な体で、そのまま水風呂にどぶんとつかった。天井を見上げて、恍惚の表情を浮かべている。
 可能なのか、と目を疑う。
 道生は少なからず敗北感に包まれながら、ドライサウナの方の扉を開ける。ここも十分に温度は高いから、すぐに体から汗が生まれ始めるが、隣のサウナ室の、あの熱さを思わず想像してしまう。あれは、慣れなのか、それとも我慢強さの賜物なのか。やはり、一つの鍛錬ゆえなのか。
 だめだ、今ひとつ集中できない。
 サウナ室と水風呂を通り繰り返したが、いつもの「空っぽ」が訪れないまま、道生はこのサウナランドを後にした。
 外に出ると、涼やかさは格別だった。火照った体が、この季節ならではのひんやりした優しい風に撫でられていく。
 今夜は出張で、九州にいる。
 ホテルからは、タクシーでやってきた。スタッフと食事を終えた後で、道生はどうしても、以前から聞き及んでいたここの薬草湯と薬草サウナに入りたくて、一人でやってきたのだ。
 あまりの心地よさに、帰りは、歩いてみようと決めた。
 ちょうど良い散歩道だ。暮れなずんだ空には、下弦の月が浮かんでいる。
 のんびり歩いていると、先程の熱すぎる薬草サウナでの光景が思い出されてきて、くすりと笑える。そして、今日のはじまりに寄せた期待感、鮮やかなタオルの色がフラッシュバックしてきた。
 よく冷えたタオルは、サウナの水風呂と同じように好きだ。初恋の記憶とも、結びついているのだが、そんなことを改めて想起しかけた時にはもう、ホテルにたどり着いていた。
 コートのポケットから鍵を探し、エレベーターで客室階を押す。
 今日の宿泊は、全国チェーンのビジネスホテルだ。部屋に入ると、メールのチェックをして、待望の缶ビールを開ける。
 さて、ここからどうしようかと考えて、早々にパジャマに着替える。旅の荷物はいつもソフトアタッシュ一つだが、どこでもホテルのパジャマは好きではなくて、いつも自分のパジャマをくるくる丸めて、荷物に突っ込んでくる。他に、歯ブラシと髭剃り、薄いパソコンと充電器が旅道具。
 しかし、いつもなら最初の喉越しから一気に染み渡るように広がっていくビールが、口をつけても今ひとつ美味しく感じなかった。薬草サウナに打ちのめされた敗北感からか、歩いているうちに体が冷えてしまったからか、それともどこか生温い缶ビールだからなのか。
 先ほどエレベーターの中で見た、丸いボタンの横に貼り付けられていた「大浴場」の文字が頭の中で点灯し始めていた。
 実はこのホテルにも、サウナがある。大浴場とサウナがあるから選んだビジネスホテルで、最近は出張があると、大抵このホテルチエーンに宿泊する。
 本日二度目となるが、ちょっくら行ってくるか、と思うと、急に体が活力を取り戻していくようだった。間抜けだな、俺は。
 こんな時のために、パジャマは下が薄手のスエットで、上は Tシャツだ。そのまま廊下に出ても、迷惑にもなるまい。
 到着したエレベーターに乗り込むと、晴れて、最上階のボタンを押す。上昇していき扉が開く。
 照明の落ちた廊下のずっと向こうから歩いてくる人影があった。それは不思議なシルエットだった。
 妖精? と道生は思う。
 すらりと手足の長い姿で、頭に大きな朝顔の花を逆さにのせている、ように見えた。いや、夜なのだから夕顔だ。
 多分、サウナハットなのだろうけど、帽子が大きすぎるのか、その子の顔は、その花の中に埋もれているようだ。
 すれ違いざま、ちょっと図々しくのぞいてみると、想像とは違って、小麦色の肌をして、大きな瞳のエキゾチックな顔立ちだった。
「こんばんは」と、向こうから言われ、道生も同じ言葉を返す。サウナハットを持参してきているなんて、余程の愛好家だと関心する。サウナ人気で、今後はこんな子たちも増えていくのだろう。男子の新参者たちには、急に混雑するようになったこともあり幾分辟易していたが、女子にはちょっと心が躍る道生である。

 もわっとした湯気が、大浴場には広がっていた。視界の中に少しずつ広々とした大浴場が見えてきて、たらいや椅子の立てる、曇った音が小さく響いていた。もう一度、さっとシャワーを浴びて、湯船に浸かる。先ほどから何か香ると思っていたが、ここでは、無数に柚子が浮かべられている。湯船に体を浸すと、柚子がぷかぷかとこちらに向かって流れてくるではないか。柚子湯にどんな効果があるのかは知らないが、さっきの夕顔姫も、この風呂を親しんだのだろうな、と束の間想像するのは楽しかった。
 今日二つ目のサウナ室へ。小ぢんまりした、ごく一般的なサウナだ。温度計の表示は、九十二度。壁には砂時計もついていて、先客がセットしたらしく、すでに半分ほど砂が落ちている。壁に備え付けられているテレビでは、午後10時からの報道番組が流れ始めていた。
 サウナも今はいろいろだ。テレビのあるなし、音楽だけが流れてくるサウナ、照明を落として音もなく時計もついていないサウナもある。
「あの、ストーンに少し水かけていいですか?」
 一人が出ていきサウナ室は今、道生とそう訊いてきた彼の二人きりになった。やはり、若者だ。
 ここではセルフロウリュウが認められているようで、最初からサウナ室に柄杓が置いてある。確かにもう少し温度が高くてもいいかなと道生も感じていたところだった。
「ああ、いいね」
 道生が答えると、すでに十分汗ばんでいる青年が手で顔を拭って笑みを浮かべ、一旦外に出て柄杓に水を組んできた。
 なんだかいきいきした表情をしていた。
「僕、これやってみたかったんです」
 え、はじめてなの?
 と、思ったのも束の間、彼は柄杓の水をストーン全体に、バシャーンと、浴びせかけたものだから、狭いサウナ室は一瞬の間の後に、天井から熱の幕が降りきた。熱気は全体に充満し、頭や全身に巻きつき、があつ、あつ、あつっとなる。  うわっと、かけた本人が少々たじろいでいる。
 道生は、今度こそメゲてはなるものかと平常心をよそおい座り続ける。砂時計が落ちきって、もう一回セットし直そうかと考えたが、一旦、外へ。大粒の汗、というよりこれは半分は蒸気だ。滴まみれの体を水風呂につけて、もう一セットだけサウナ、水風呂をし終えて、今回は終了とした。

 そのまま狭い客室に戻るのも味気ないので、一階のロビーラウンジへ降りてみる。少しは冷たいビールが期待できるかもしれない。
 ロビーにも、まばらに人がいたが、ブルーの、おしゃれなジャージー姿の女性が、テレビ画面を見ながらストレッチをしていた。
 彼女は道生を振り返ると、「先ほどは」と、小さく会釈された。
「先ほど? そうか」と、道生は両手でサウナハットの形を作る。
 驚くことに、髪型そのものが、サウナハットと同じように、肩のあたりで外に跳ねた夕顔姫だった。
「サウナ、よかった?」と、つまらない質問を仕掛けた時に向こうから遮られた。
「どうしよう。もう決めなきゃ。そちらは、夜そば、行かないんですか?」
「俺? 名物らしいね。まだ食べたことがないんだけど」
「なるほどね、そういうタイプか」と、横に真っ直ぐ伸ばした片腕をもう片腕で引き寄せながら、ストレッチを続けている。
 急にそういうタイプかと言われても、どういうタイプをさしているのかわからないし、なんだかカチンとくる。
 自動販売機で缶ビールを買おうとして、財布を持っていないことに気づく。
「食べない理由は、太らないようにですか? それとも、超グルメだとか?」
 またずけずけと訊かれたので、
「どっちもってことに、しといてもらおうかな」
 道生はそう答え、仕方なく給水機の水を飲んだ。それがいつにないほどうまく感じて、一気に飲み干し、もう一杯汲んでソファに座った。 彼女は自分でも水を汲み、誘ってもいないのに隣に座ってきた。
「あと、五分か」
「何が?」
 テレビの番組のことでも指しているのかと、画面を見やる。
「夜そばですよ。食べたいな」
 その口調は、ため息まじりで可愛らしかった。
「行ってきたらいいじゃない」
「私、明日走るんです。マラソン大会があって」
「そうなの?」
 ということは、おそらく、同じ用件で彼女と自分はここにいるのである。隣町で、年の一度開催される大きなマラソン大会で、市民ランナーも、招待選手たちも走る。道生は、走る方ではなくて、仕事で来ている。この大会のスポンサードをしている飲料水メーカーが元々取引先で、昨年からスタッフとして来ている。他のスタッフは、競技会場により近い開催都市のホテルに泊まっているが、道生は少し足を伸ばして、サウナ付きのこちらを選んだ。
「俺も、そのために来たんだ」
「ランナーですか?」
「いや、そう見える?」
「そう見える? とか、どう見える? とか、そう言うことを訊く人って、なんかな」
「口が悪いね。よくそう言われない?」
「別に。言ってくれるような友達も、あんまりいないから」と、彼女は肩をすくめて、水を飲み干した。
「だめだ。行きましょうよ、夜そば」
「だから、自分で行きなって」
「道連れにします。行こう」
「いや、まじ?」
 お願いされると断れない優柔不断さが、やはりまた顔を出す。夕顔に腕を引かれるように、エレベータに乗る。
 二階のレストランは、ちょうど閉店の準備をしていたが、エプロン姿の店員に気持ちよく席に案内される。各自、小さな器に自分で麺とスープをよそう。
 シンプルなラーメンだ。海苔としなちくと刻んだ長ねぎだけがのる。
 横に並んだ彼女の真似をして、道生も胡椒をたくさんかける。
「案外、うまいんだね」と、道生が正直に呟くと、
「でしょう?」と、夕顔。
「私、前に三杯食べたことあるんです。夕飯代、浮かせちゃった」
「それはちょっとな」
 夕顔は手を止めて、顔をあげる。そんな時、少し小悪魔っぽい表情に見えるのは、瞳が黒黒として顔に対してやけに大きいからだ。
「やっぱり、そういうタイプか。だったら、あれでしょう。飛行機の国際線とか乗って、食事が出てきても、降りてから美味しいものが食べたいから、パスとか言っちゃう人だ、きっと」
「まあ、わりとある」
 実は明日のお昼もスタッフの弁当はパスして、終了後に地元で評判の鴨しゃぶそばを食べて帰るつもりだった。だから余計、夜中の麺類は避けたかったが、食べ始めると腹に収まってしまう。
「知ってます? ここのラーメンね、十六杯食べて帰った中国の人がいたんですって。食べずに帰る人より、そっちの人の方がきっとモテると思うな」
「なんで?」
 夕顔理論を訊いてみたくなった。自分で付け加えた。
「逞しいとか、頼もしいとか、そういうこと?」
 夕顔は細い指で持ったレンゲで丁寧にスープをすくうと答えた。
「私、けちなんですよ。だから、せっかくのものを無駄にするの、いやなんです。飛行機のマイルとか、ホテルのポイントとか、もっと言うとお肉やさんでつけてくれる油脂とかも漏れなくもらう方なんですよ。だから、無駄にする人をみると、眉がこうやって」
 と、自分でぎゅうっと寄せてみせた。
「寄っちゃうの」
「面白いけどさ、それは答えになっていないよ。単なる君の好みでしょう?」
「はい、そうでした。っていうか、やっぱり一般論だと思う。男子は、勢いです。そのエネルギーが、いつか自分に向けられる気がするから」
 互いに、食べ終えた。夕顔は、きれいにスープまで飲み干してしまった。
「ケチだから、この見かけのわりに、私、全然モテないんです」
 いかにも頭の回転が早そうな夕顔との話は、意外に面白かった。
「自分で言うかな? そういうこと」
「お名前、訊いていいですか?」
「杉山道生、道が生まれるで道生。君は?」
 夕顔のままでいいような気がしたが、現実的な名前が返ってきた。
「斎藤碧子です。碧は、紺碧の碧。道生さんも、その見かけのわりにモテなそうだな」
「俺はもうおじさんだからね」
「そういうんじゃなくて、モテようとしていない。どこかで人に初めから線を引いている。たぶんここ二人は、お互いにそうです」
「なるほど」と、短く答えながら、線を引いているはずの夕顔がどんどん踏み込んでくるような気がしていた。
「明日は、久しぶりに頑張って記録更新します。道生さん、大会関係者のブースなら、折り返し地点にいるでしょう? 探しますから、手を振ってね」
 夕顔こと碧子の食べ終えた器の中は、きれいに光っていた。まるで彼女の額みたいに。

 快晴の空の下、マラソン競技会は始まった。
 スタッフのゼッケンをつけて、道夫はブースの手伝いをしている。沿道には、選手を応援するプラカードを持った人たちや、鳴り物入りの応援もある。
 自分には、本音を言い合うような友達もいないと言っていた碧子。満更嘘でもないのだろう。マラソンランナーたちは、大会に出るうち仲間ができて、よく同じホテルに集まっているという話を聞くが、それを象徴するように、碧子は一人きりだった。
 どうあれ彼らは、誰に頼まれたわけでもないのに、42.195キロを走る。力を振り絞って走る。わざわざそのために、宿泊ホテルまで取ってやってきて、走り終えるとまた日常へと帰っていく。その後にどんな快感があるのだろう。碧子が口にした、ケチなんて言うのとは、真反対の人生観だ。わざわざ走るためにやってきた夕顔。サウナのためにはわざわざ帽子まで買う夕顔。もっと話を訊いてみたかったな、と思う。
 せめて夜そばに付き合ってやってよかった。そのくらいも付き合えないなら、自分こそケチ男だ。だからモテないのだと言われたらその通りだ。自分の決めたことから、なかなか外れようとしない。自分ではもう、必要な喜びは知っているから、とばかりに無駄を省き、決まった省エネをして閉じこもっている。
 そろそろ招待選手たちが、折り返し地点に入ってきた。贅肉のない引き締まった体で、瞬く間に走り抜けていく。
 競技選手たちが凌ぎを削って過ぎていき、やがて市民ランナーたちの姿に女子も見えてきた。
 ランニングから覗く腕に光る汗。碧子が見えてきた。膝から下の長い足で前へ、前へと、確かなストロークを刻んでいる。前へ、前へ、少しでも前へ、全身が放つそのエネルギーに惹きつけられる。市民ランナーの中では、ずいぶん早いグループにいる。
「おーい、がんばれー」
 自分でも驚くほどありきたりの言葉を口にして手を振ると、彼女がこちらを見て、そして通り過ぎ、また振り向いた。
 その表情には、満開の夕顔の花が咲いていた。
「×××」
 と、その口元が動いた。
「なんて?」
 昔、山口百恵が歌う、そんな歌があった、とかどうでもいいことを思い出し、慌てて聞き返そうとしたが、彼女の背中はみるみる遠ざかっていった。振り向きざまの、息の苦しい中に浮かべた、聡明な笑顔だった。不覚にも、道生は、心を射抜かれていた。
「行けー」と、もう一度、聞こえないはずの声に出す。

 最後の市民までが折り返していく頃には、先頭ランナーたちにはもう大会の最終コースが目前に控えているはずだった。渦に巻き込まれていくように、市民グラウンドへと流れ込んでいく。
 先頭でもどん尻でもなく、真ん中よりは早い方のグループに混じって、今もきっと一歩一歩走っている碧子を思う。
「×××」
 あとで? と言ったのかな。それとも、何だろう。
 市民グラウンでゴールを待ち受けたい気持ちを抑えて、最後まで仕事をこなす。
「お弁当、やめときます?」
 スタッフにそう言われて、昨日の碧子の話を思い出し、
「今日はもらおうかな」、と、答える。
 走り終えた碧子が立ち寄ってくれるような気がして、道生はありきたりの幕の内弁当を口にしながら、片付けの終わった場所に最後まで残っている。
 テントを畳む時間になったが、碧子は現れなかった。
「お疲れ様」の声があちらこちらから響きだし、道生は、駐車場まで歩きながら、未練がましくホテルに電話をかけた。
「昨日宿泊した、杉山道生という者ですが」
「何か、お忘れ物ですか?」
「いえ、例えば、伝言なんてなかったですよね?」
 伝言なんて、そんな古臭いこと、あるはずないとは思いながら、少し期待している。

「少々、お待ちください」

束の間、保留音が鳴り、

「特には、ないようですが」と、返事が来た。
「失礼しました。ではまた来年、お世話になります。柚子風呂、よかったです」
 道生は、そう言って電話を切った。
「×××」
 またね、だったかな。だったらまた来年、会えるのかもしれない。今日はこのまま帰京して、カオルさんの店で飲ませてもらおう。自分がいつも通りであるように、人に引く線を口にした碧子はきっと走り続けている気がした。いろいろな街の陽射しを浴びて。

道生はランナーの走った後を少し、走ってみた。

第3話につづく

谷村志穂  TANIMURA SHIHO

1962年北海道札幌市生まれ。北海道大学農学部にて応用動物学を専攻。1990年ノンフィクション『結婚しないかもしれない症候群』がベストセラーとなる。1991年『アクアリウムの鯨』発表し、小説家デビュー。紀行、エッセイ、訳書なども手掛ける。2003年北海道を舞台に描いた『海猫』で第10回島清恋愛文学賞を受賞。作品に『余命』『黒髪』『尋ね人』『ボルケーノ・ホテル』『移植医たち』『セバット・ソング』など。『海猫』は故森田芳光監督により2004年、『余命』は生野慈朗監督により2009年映画化される。最新刊に『半逆光』。